―杉野川源流のトチノキ巨木群が危ない―

平成26年4月頃より、伐採業者によるトチノキ等の巨木約25本の買い付け、伐採の動きがあり、保全活動が始まりました。

 ①嘉田知事、地元関係者、市、県による伐採予定地視察(平成26年5月)

 ②学術団体、自然保護団体が滋賀県および長浜市に保全を求める要望書の提出(平成26年6月~8月)

 ③三日月滋賀県知事、藤井長浜市長による伐採予定地視察(平成27年5月)

  知事と市長は「トチノキは守るべき価値がある」と保全について前向きなコメントを行いました。

―裁判紛争から巨木トラストで伐採回避へ―

平成26年8月から、専門家と県の協議によって伐採回避交渉が粘り強く行われてきました。

しかし、売主であった土地所有者と伐採業者の間に売買に関する認識に大きなずれがあることから、平成27年12月に伐採回避交渉が決裂、伐採業者が立木の所有権を求める訴訟が提起され、大津地方裁判所、その後、大阪高等裁判所で争われてきました。

そして、平成30年6月、巨木を1本も伐採されることがない形で裁判を終了させることになり、びわ湖源流の森林文化を守る会が巨木40本のトラストをすることになりました。


■琵琶湖源流の巨木保全に関するこれまでの経緯

<安曇川源流の経緯:平成20年頃より>

 平成20年頃より高島市朽木地区で森林文化の象徴であるトチノキ巨木の買い付けおよび伐採が進行し、3年間で60本以上が伐採された。伐採跡地の荒廃は目を覆うばかりの乱れようだった。

 平成22年10月から、森林の荒廃を危惧する地元住民と専門家によって伐採業者との伐採回避交渉が始まった。また、琵琶湖森林づくり県民税を使って巨木の売却を防ぐこと、巨木を地域で主体的に保全できる仕組みづくり、巨木林の保存の法的措置などを嘉田知事(当時)に要望した。

  平成22年11月にはトチノキ所有者や地元でトチノキを愛する市民・住民により「巨木と水源の郷をまもる会」が設立された。

 一方、「巨木と水源の郷をまもる会」が、伐採回避について伐採業者との調停を申し立てたが不調に終わり、伐採業者はトチノキ等巨木の所有権を求めて森林所有者5名に訴訟を提起した。 そこで、自然保護団体である日本熊森協会が中心となって日本各地に呼び掛けて浄財をあつめ、資金(1000万円)を拠出して、伐採業者から巨木53本を買い戻し、和解と伐採回避が成立した。

 一方、滋賀県による琵琶湖森林づくり県民税を活用した巨樹・巨木の森整備事業が平成23年度に創設され、安曇川流域で130本以上のトチノキ巨木の伐採が回避できた。

 平成23年度から現在まで、「巨木と水源の郷をまもる会」によって巨木の調査、巨木保全協定の締結、巨木の観察会、安曇川の上下流交流、トチノキ祭りなどが毎年実施され、保全の仕組みづくりが進んでいる。  

 

<高時川源流域の動き:平成25年より>

 大規模な巨木群が残されている長浜市余呉町の高時川源流では、平成25年6月に地元住民や森林関係者により「高時川源流の森と文化を継承する会」が設立された。ここでは巨木の調査や巨樹・巨木の森整備事業による保全協定の締結だけではなく、高時川源流独特の森での暮らしぶりを含む森林文化を継承する活動が行われている。

   

<行政と住民、二本立ての伐採回避・保全への動き:平成28年2月より>

 杉野川源流の巨木などの森林資源を持続的に活用するために道路整備や地域振興を含んだ「山を活かす、山を守る、山に暮らす奥琵琶湖源流の会」を2016年3月末に設立することを、平成28年2月16日に三日月知事が記者発表した。これはいわば行政側の公的資金に基づく面的動きであり、滋賀県と長浜市との林業整備や地域振興、観光政策の連携が期待できる。

 一方、これまで安曇川流域や高時川流域で市民・住民として、巨木群保全に心を砕き伐採回避の経験を蓄積してきた人たちが結集をし、さらに琵琶湖・淀川水系や日本各地の研究者やマスコミ関係者に呼び掛け、「びわ湖源流の森林文化を守る会」が平成28年2月24日に設立されることとなった。この会では、「蛇口のむこうにトチノキ巨木群を見てください!」を呼びかけ理念として、トチノキの伐採回避を短期的目標として、また中長期的には、トチノキ巨木群や水源地域の生態系や生活文化の価値を世論に広く訴えるための活動を行うことを目標としている。 

 平成20年からの足掛け8年にわたる滋賀県のトチノキ巨木を愛する人たちの熱い思いは、全国の巨木林や水源林、また森林の生物多様性を保全したい、と願う人びとの思いを先取りするものでもありました。皆さんのご理解をいただき、「貴重なトチノキ巨木をこれ以上伐採することなく次世代に受け渡したい」という強い思いを全国に「熱伝導」できるよう、活動を広げていきます。皆さんの熱いご支援、お願いします。